タクシー運転手が地理に詳しい理由

乗務をスタートさせたばかりの新人からベテランまで、タクシードライバーは地理に詳しい人ばかりです。

タクシードライバーの中には、地元出身ということで地理に詳しいという人もいますが、少数派です。ドライバーの多くは最初から地理に詳しかったわけではなく、営業しながら道を覚えていきます。

しかし、東京のように道路が複雑な地域でタクシードライバーとして営業するためには、二種免許取得の他に当該エリアのタクシーセンターが実施している「地理試験」への合格が必須です。

地理試験とは

地理試験は、東京特定指定地域(特別区、武蔵野市及び三鷹市)や、神奈川、大阪などの指定地域でタクシードライバーとして営業するために合格が必須の試験です。正式名称は「輸送の安全及び利用者の利便の確保に関する試験」と言い、試験ではタクシー事業に係る法令、安全および接遇(接客)と指定地域の地理に関する問題が出題されます。

二科目の試験に合格したら合格証を交付され、正式にタクシードライバーとして営業できるようになります。東京などの指定地域で営業しているタクシードライバーは、すべて地理試験に合格しています。試験日は月・火・金曜日で、受験料は各科目ごとに3,400円、2科目で6,800円です。

地理試験では、タクシードライバーに必要とされる知識全般が求められるため、たとえ地元出身であっても難易度はかなり高いと言えます。そこで多くのタクシー会社では、未経験のドライバーが地理試験に合格できるよう、独自に講習を開催したり、問題集を作成したりするなど試験対策を実施しています。

試験の合格点

タクシー事業にかかる法令、安全および接遇の科目は、筆記試験で45問出題され、合格基準は36問以上正解(正解率80%)となっています。一方、当該指定地域に関する地理の科目についての出題は、筆記試験で40問出題され、合格基準は32問以上正解(正答率80%)となっています。いずれも制限時間は60分間です。

両試験の合格が必須ですが、地理か法令のどちらかのみ合格した場合は、次回以降の試験で合格した科目の受験が免除されます。各当該エリアのタクシーセンターの公式ホームページでは、過去問と解答を閲覧することができるので、タクシー運転手への就職・転職を考えている人はぜひチェックしてみると良いでしょう。

試験の出題内容

実際の地理試験では、幹線道路や交差点の名称、施設・建物の正しい場所と名称、タクシーの乗車から降車までのコースで通過する交差点名など、業務にかかわる地理の問題が出題されます。ただ単に地図帳を丸暗記すれよ良いというものではなく、実際にタクシーを走らせるシミュレーションをして、正しい地理が頭に入っているかどうかが試されます。

タクシー事業に係る法令、安全及び接遇の試験では、「法令」「安全」「接遇」の3項目に分かれています。

法令の試験からは、道路運送法やタクシー業務適正化特別措置法など、タクシー業務にかかわる法令から出題されます。

安全の試験からは、安全のための正しい運転方法や事故発生時の対応などについての問題が出題されます。

接遇の試験からは、タクシードライバーのマナーやお客様に対する接客態度などの問題が出題されます。

試験勉強

実際に過去問題を見てみるとわかりますが、普段からクルマを運転している人でもなかなか意識することのない交差点の名前や住所についての問題が出題されています。特に東京や大阪のタクシードライバーは地方出身者が多いため、最初は地理を覚えるだけでも一苦労です。

さらに、地理試験に合格するまではタクシーの業務に従事することはできないため、基本的に座学で覚えるしかありません。逆に言うと、当該エリアの地理に詳しくなくても、しっかりと勉強しておけば、地理試験に合格することは可能です。

受験勉強などではヤマを張ったりすることもありますが、地理試験を受ける場合は該当地域の幹線道路、交差点、主要な建物や施設などの名称、場所などはすべて覚えるようにしましょう。タクシーは運転できませんがクルマで実際に走ってみるのもいいですし、ひたすら丸暗記するのも良いでしょう。頭の中に当該エリアの正しい地図がイメージできていれば、合格点に達することは決して難しくありません。

当該エリアのタクシーセンターからは問題集が出されているので、繰り返し問題を解くようにすれば、試験対策はバッチリです。

まとめ

タクシードライバーが地理に詳しい理由は、地理試験合格のためにしっかりと対策をして、見事合格を果たした人がタクシードライバーになっているからです。

もちろん、タクシーにはカーナビも付いているため、詳細な地図やルートはカーナビを利用します。

ただし、裏道や近道など効率的に稼ぐために利用できそうな道路については、業務を経験しながら学んでいくことができます。

新人もベテランも関係なく、お客様にとってタクシードライバーは「道に詳しくて当たり前」ですので、ドライバーへの就職・転職を希望する人はぜひ、地理試験の合格を目指してくださいね。